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カウンセリングは、ただ話を聞くだけで意味がなく、効果もないと誤解されがちです

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カウンセリングの多くは、
対話を通じて、
心理的なサポートを進めていくものです。
すると見かけ上は、
友人、知人に愚痴を言ったり、
相談するのと、
よく似ています。

そのためか、
「カウンセリングは聞くだけなので意味がない」
「効果もない」
といった話を聞くことがあります。

それはカウンセラーからすると、
二つの誤解があるように思えます。
一つは、
「ただ話を、ただ聞いているだけで意味がないし、効果もない」。
もう一つは、
「カウンセリングは話を聞くだけ」
というものです。
専門家ではない、
一般の方々から、
そのように見えても無理はありません。

しかし、助けが必要な時に、
誤解したままだと、
その機会を逸することになってしまいます。
それはもったいないことと感じますので、
この二つの誤解について、
解説することにしました。
ご参考になれば幸いです。

カウンセリングで話を聞く際は、専門的な技術を使っている

自分の話を聞いてもらうというのは、
ある意味誰とでもできます。
友人等に話を聞いてもらって、
すごく楽になることだってあります。
そういった経験と、
カウンセラーに話を聞いてもらうというのは、
一体何が違うのでしょうか?

多くの場合、
友人等に話をするときは、
自分のストレスを吐き出しています。
だからひとしきり話すと、
自分の中のストレスが抜けて、
楽になります。
心の重荷を下ろす感覚ですね。

ただこのような体験は、
聞き手にある程度の力が必要です。
どんな人に話しても、
このような体験が起きるわけではありません。

ポイントは相手の話を遮ったり、
ましてやアドバイス等を言わない、
ということです。
これが以外に難しいことなのです。

相手が辛い話をするというのは、
当然聞き手にも負担がかかります。
だから話を聞いていると、
段々苦しくなってくるのです。
やがて耐えられなくなり、
つい前向きな話をしてしまうのです。

「それは○○すればいいんだよ」
「気持ちを切り替えて前向きになろうよ」
などといった対応です。

このような返しがあると、
話し手は、
自分を否定されたと感じます。

「この人も結局わかってくれないんだ」と思い、
かえってストレスになってしまうのです。
相手の話をさえぎることなく、
まずは受け止めるというのは
聞き手に負担がかかります。

そんなに簡単なことではないのです。

もし友人に話して、
楽になるまで聞いてくれるなら、
相当包容力と理解力がある人ですね。
だからそのような友人が、
身近におられないことも多々あります。
そのような対応ができるカウンセラーがいるとしたら、
それだけでも価値あることと思います。

ただ話を吐き出すだけでは、
そのときはよくても、
またストレスが溜まってしまいます。
その場限りのストレス解消に
なってしまうのです。

話を聞きながら、
その場限りのストレス解消にしないためには、
専門的な技術が要るのです。

このような話を聞き方を得意としているのは、
アメリカの臨床心理学者、
カール・ロジャーズによる
来談者中心療法でしょうね。

このカール・ロジャーズのもとでカウンセリングを学んだ、
アメリカの哲学者ユージン・ジェンドリンは、
うまくいったカウンセリングと、
うまくいかなかったカウンセリングの違いを
録音を分析することで見出しました。

それは話の内容ではなく、
言葉の使い方でした。
話し手が具体的なことを明晰に話す時間が多いカウンセリングは
経過も思わしくありませんでした。

ところが話し手が、
自分の思いを言葉にできるかできないかの、
曖昧な感覚に留まっていると、
自発的な気づきがどんどん起こり、
ストレスを単に吐き出さなくても、
気持ちが吹っ切れますし、
出来事に対する見方や行動まで、
いい方向に変化していったのです。

そしてジェンドリンは、
このような話し手の望ましい変化を、
自発的に促すには、
言葉になるかならないかのあいまいなフィーリングを
話し手が言葉にしていけるようサポートすることが大切
ということを発見しました。

言葉にしづらい体験の
言葉による象徴化の作業ですね。
これらを体験過程理論という理論で説明し、
具体的な手法としてフォーカシングを開発したのです。

つまりカウンセラーは、
ただ漫然と話を聞いているわけではありません。
クライエントさんがとても辛い状態で、
自分のストレスを吐き出すように話しているときは、
まずは遮ることなく受け止めていきます。

ある程度心の余裕が戻ってきたら、
今度は話し手を言葉になるかならないかの、
あいまいな状態に留まらせ、
そこを言葉にしていけるよう、主に言葉の返し方で、
サポートしていきます。

すると自然に、
気づきや解放が起きてくるのです。
ストレスを感じていた出来事に対しての、
考え方、感じ方、行動が変わるのはもちろん、
時には自分のあり方まで
変わっていきます。

このように「話を聞く」という行為を通しての、
対人援助は、
非常に奥深いものです。

それはストレスを吐き出すだけの行為ではなく、
話し方のあり方を、
根底から変える体験を提供するものです。

このロジャーズによる来談者中心療法、
そしてそのエッセンスを理論化、技法化した
ジェンドリンのアプローチは
心の自然治癒力を重視したものと言えるでしょう。

カウンセリングは、ただ話を聞く以外にもいろんなアプローチを持っている

ここまでロジャーズの来談者中心療法、
ジェンドリンの体験過程、フォーカシングについて、
その概要をお伝えしてきましたが、
これらはカウンセリングの一流派に過ぎません。

数多くの流派が存在し、
より積極的なアプローチを取るものも多いです。
これらのカウンセリングを受けると、
「カウンセリングは話を聞くだけ」という
イメージは大きく覆されるでしょうね。

それは心の自然力を促すやり方だけでは、
時間がかかりすぎたり、
心の自然治癒力が働きにくいコンディションの方への
対応力を広げます。

例えば、最近注目されている、
アドラー心理学は、勇気づけをベースに
積極的にクライエントさんを教育していきます。
来談者中心療法とは、
対称的ですね。
クライエントさんの、自分でも気づいていない、
ある種自己中心的なの行動の目的を明らかにし
社会共同体に戻れるよう支援することを
重視する立場です。

クライエントさんのパターンを明確にするため、
早期回想というアプローチもあります。
過去の記憶を引き出し、
そこからクライエントさんの信念や、
対人関係のクセを明らかにすることもできるのです。

ベーシックな認知行動療法も
積極的に変化を促していきます。
クライエントさんの日常生活に
生きづらさをもたらす思考を特定し、
対話を通じ和らげていきます。

また認知行動療法は症状に応じて、
進める手順が全く異なります。
例えばパニック障害に対しては、
思考の変化を促したり、
過去を掘り下げることはしません。
代わりに過呼吸時の対処法や、
強い不安で制限されてしまった
行動範囲を広げていくアプーチを主に行い、
成果をあげています。
症状に応じて非常に多様な
アプローチを持っています。

また心の様々な部分(パート)がぶつかり合い
混乱している状態に取り組むアプローチもあります。
これらについては別の記事で、
解説しました。

これ以外にも、心理療法は数多くあり、
今回の記事ではとても紹介しきれません。
カウンセリングはこのように
「話を聞く」以外のアプローチが数多く存在します。

カウンセリングで取り扱うテーマも、
複雑化、多様化しているということでしょうね。

最近の傾向として、
一つの流派だけではなく、
複数の流派を学び、
統合的に用いるカウンセラーが増えつつあります。

 

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